96歳、英国最長の在位70年を迎えたエリザベス女王死去。その時のロンドンは。英国や世界各国から悲しみの声

英王室は8日夕、エリザベス女王が亡くなったと発表した。96歳だった。この悲報を受け、深い悲しみに包まれているイギリス国内

世界各国に駐在している海外特派員より届いた、まだ日本では知られていないリアルなローカルニュースを配信しています。
 9月8日に歴代最長の70年にわたり英国君主を務めたエリザベス女王が亡くなり、深い悲しみに包まれているイギリス国内の様子を、イギリス在住の特派員がお伝えします。

  • http://イギリス特派員 キャリーさん
    • 英国史上初、即位70周年を迎えたエリザベス女王。8日、悲報に包まれたロンドンの様子は

     エリザベス女王は70年以上というイギリス史上最も長い間、王座に君臨した。これは72年以上君主を務めたフランス国王ルイ14世に次ぐ、世界で2番目に長い在位期間であり、女王は第二次世界大戦を経験した国家主権者の1人であった。英国では今年の6月にエリザベス女王の在位70年を祝うプラチナ・ジュビリーを記念し、国民は4日間に及ぶイベントを盛大に祝い、楽しんだ。その経済効果は1兆円を超えるものだったそう。プラチナ・ジュビリーは私たちにとってはまだまだ新しい記憶として残っている。

     

    プラチナ・ジュビリーの様子

     女王が亡くなる2日前、スコットランドのバルモラル城にてリズ・トラス首相を任命したばかりだった。クイーンとしての最後の仕事が、女性の新首相の任命だったということもあり、最高の最期の仕事であったとたたえる人もいる。

     悲報が報じられた8日の夕方、ロンドンの街中は一気に悲しみモードへと包まれた。その日の夜には街中の電子掲示板や公共交通機関の電子広告は、一般広告から真っ黒な掲示板へ、あるいはエリザベス女王の功績をたたえるものへと切り替えられた。翌日以降も多くの建物で掲示板をエリザベス女王のものへ張り替える様子がみられた。

     
    ピカデリーサーカスの電子掲示板

     
    ロンドン街中の掲示板

    • 英国民にとってエリザベス女王の存在とは?新国王への率直なリアクション

     悲報が報じられた後、多くの人がバッキンガム宮殿など関わりのある場所に献花をし、女王の死を悲しみ功績をたたえた。献花とともに添えられた女王の似顔絵や手紙に思わず涙する人も少なくなかった。9月10日イギリスの新国王に任命されたチャールズ3世は、「わたしの最愛の母、女王の死去は、わたしと家族全員にとって最大の悲しみの時だ」と述べた。

      
     献花の様子

    英国民からはこのようなメッセージが届いた。

     「女王のいない生活を想像するのは難しいですし、今、女王が私たちと一緒にいないことを信じるのも難しいです。イギリスが大変なとき、女王はいつも私たち国民のことを気にかけ、寄り添う言葉をかけてくれました。いつまでも尊敬していること、これまでの感謝を伝えたいです。」

     「彼女が死んだとき、私は悲しかったが、驚きはしませんでした。女王はフィリップ殿下をとても愛していたので、彼の死が彼女の死を加速させたのだと思います。」

     「女王はそれ自体が組織のようなものでした。私と私の両親の人生の全てにおいて、3世代の女王でした。だから大きなイベントには必ずと言っていいほど、女王がいらっしゃいました。女王について私が尊敬していることのひとつは、あなたが誰であろうと、アメリカの大統領であろうと、世界最大の企業のトップであろうと、常に女王を尊敬し、彼女に会うことは大きな出来事だったということです。これほどまでに尊敬されていた人は世界中どこにもいなかったと思います。」

     「エリザベス女王が長生きしてチャールズ3世が王様になるチャンスはないと思っていた。チャールズ3世は皇族としてとても立派な方で、息子たちと接する姿は本当に素敵だと思う。」

     「チャールズ3世はこの瞬間のために何年も準備してきたと思います。女王の功績を超えることは難しいと思いますが、女王の遺志を継ぎ、国のために尽くしてくれると確信しています。」

     私がイギリスに来て初めて女王を観たのはクリスマスの日だった。12月25日の午後3時、女王がテレビの前でスピーチをするのがイギリスでは毎年の恒例行事とのことで、ホストファミリーと一緒にテレビを眺めた。そして私が初めて女王を直接目にしたのは、今年の6月のプラチナ・ジュビリーの式典だった。女王が王室から姿を現した瞬間に大きな歓声が上がり言葉では伝え切れないほどの感動を味わったひと時だった。イギリスに住み始めてたった2年の私であっても、今回の悲報はものすごく衝撃的で、日を増すごとに悲しみや虚無感が強まっている。英国民にとっては計り知れないほどの出来事に違いない。ロンドンには世界各国のメディアが大勢集まり、日本でも大きく取り上げられ、エリザベス女王が英国だけでなく世界にとってどれほど大きな存在であったのかをひしひしと感じる。

    献花の様子

    • オペレーション・ユニコーン?女王の悲報から、国葬までの計画がスムーズに取り決められたそのワケ。今後、イギリスは何が変わる?

     女王のお葬式は9月19日(日)に予定され、この日は祝日となる可能性が高い。イギリスの君主としてウェストミンスター寺院で葬儀が行われるのは、1760年のジョージ2世以来のことだそうだ。2,000人のゲストが参列する予定。

     女王の悲報により、イギリスではもともと予定されていた9月15日(木)〜9月17日(土)のストライキは混乱回避のため中止、サッカーの試合やコンサートなどのイベントも中止とアナウンスされた。女王が亡くなった翌日以降、ロンドン内のいくつかのショップは、死去を悲しみ女王をたたえる日を設け、営業を中止するお店もいくつか見られた。BBCではコメディー関連の放送は延期、テレビでは女王関連の情報を中継して放送されている。例えば、柩の搬送中継やチャールズ3世の新国王任命式の中継など。

     女王が亡くなってから悲しみに包まれ騒然としていたが、大きなパニックを起こすことなく、国葬までの準備が比較的スムーズに行われ、とても早い段階で国民にアナウンスされた。この背景には、オペレーション・ユニコーンの存在がある。女王が亡くなった後の段取りについて、生前よりあらかじめプランが決められていたのだ。スコットランドで亡くなった場合の手順をオペレーション・ユニコーン、イングランドで亡くなった場合の手順をオペレーション・ロンドンブリッジと呼び、死去後どのような手順を踏んでいくか明記されていたそう。今回はこのオペレーション・ユニコーンに従い、悲報の中で国民のショックやパニックを最小限に抑えながら、物事が比較的スムーズに進んでいる印象を受ける。10日に新国王が任命され、すでにチャールズ国王向けのオペレーション準備が進められているのかもしれない。

     今後は、イギリス国歌の歌詞の一部にある、Got Save the Queen(ゴッド・セーブ・ザ・クイーン:女王陛下万歳)がGot Save the Kingへと変更されるそう。また、イギリスの国家元首として初めて紙幣に描かれたエリザベスの通貨は、今後チャールズ国王のものが新しく発行されるとのこと。

    各新聞社、雑誌の表紙

     英国民はもちろん、私のようにイギリスに住んで間もない人たちからも、世界中から愛されていた、イギリスの母のような存在のエリザベス女王。まだまだ深い悲しみから抜け出せないだろう。

     

    イギリス特派員 キャリーさん■ライタープロフィール

    Carrie(キャリー)

    ロンドン在住の26歳。貿易会社を経営する傍ら現地在住ライターとしてイギリス発祥やイギリスに初登場したお店、SNSで人気の商品や現地で話題のものなどをタイムリーに発信中。「旅行が難しいこんな世の中ですが、少しでも現地の雰囲気がみなさんに届けられると嬉しいです。読んで、見て、訪れて、楽しい時間を一緒に過ごしましょう」

     

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