英国のリサイクル意識は日本の3倍!!?フードロスの削減ができる大人気の取り組みとは

環境にもお財布にも優しいアプリがヨーロッパで大人気

 エスダムスメディアJAPANでは、世界各国に駐在しているエスダムス海外特派員より届いた、まだ日本では知られていないリアルなローカルニュースを配信しています。今回はいまヨーロッパで話題になっているアプリ“Too Good To Go”について紹介します。

  •  ある調査では、2020年の英国全体のリサイクル率は44%と報告されており、中でもウェールズは64%と世界2位のリサイクル率(世界1位はドイツ)、そしてスコットランドやイングランドも40%以上がリサイクルされているという結果になっています。一方、日本の2018年のリサイクル率はというと、20%以下であると報告されています。

     リサイクル意識が世界的にも高いイギリスでは、SDGsをサポートする様々な活動があり、今回はそのうちの1つ、フードロスが削減できるアプリを紹介します。

    ・世界で全食品の1/3以上が破棄。フードロス削減に貢献できる“Too Good To Go”

     Too Good To Goは、フードロスを削減するために2016年にデンマークで誕生したアプリケーションです。レストランやカフェなどの飲食店が廃棄前のフードをToo Good To Goのアプリ内で販売することができ、ユーザーはそれを普段よりも安い価格で手に入れることができるというシステムです。店舗とユーザーをマッチングし、店舗はフードロスの削減ができ、ユーザーはフードを安価で購入できるという、どちらにも嬉しいサービスです。

     イギリスでは840万人が食糧難であるといわれている反面、1年間に約950万トンのフードロスを出しています。そして食料が不必要に廃棄されることで、毎年数十億ポンドが使われています。中でも多く破棄されているフードは、じゃがいも、りんご、パンだそうです。(BusinessWaste.2022)ちなみに日本のフードロス(食用部分のみ)は約600万トンと推計されています。(環境省より.2021)

     世界で生産される全食品の1/3以上が廃棄されていると言われているいま、このアプリは食品ロス削減の取り組みSDGsのサポートへとつながっています。

    ・フードがたくさん入った夢の福袋”マジックバッグ”。どうやって販売しているの?

     このアプリで販売されているフードを、私たちはマジックバッグと呼びます。マジックバッグとは食品の詰合わせが入っており、日本で言う「福袋」のようなものです。いろいろな商品が日替わりで入っており、開ける時のワクワクも商品の一つです。

    マジックバッグ

     販売の仕方は簡単!アプリ内でマジックバッグを販売する店舗を登録したあとは、

    ①販売したいフードをマジックバッグとして登録します。また受け取り時間を設定します。(肉・魚・惣菜・などカテゴリー別に1店舗で数種類のマジックバッグを販売することもできます)

    ②ユーザーがアプリ内で店舗やフードを検索し、マジックバッグの代金を前払いします。

    ③店舗が設定した受け取り時間にユーザーが来店します。

    ④店舗はフードロスを削減し環境保護へ貢献しながら、新しいカスタマーを見つけることができます。

     Too Good To Go のアプリは現在、イギリスを含むフランスやスペインなどのヨーロッパとアメリカの17ヵ国で展開されており、イギリス国内ではユーザーが280万人以上、1万2000社以上の店舗が参加しています。またイギリス国内だけでも、すでに1千万個以上のマジックバッグが購入されています。これは、ロンドンからニューヨークまで飛行機が1回に排出するCO2の量におきかえると、およそ2万8千回分のCO2を削減したことになります。(Talking retail,2021,Too good To Go ukより)

    このToo Good To Goを知らない人はほとんどいないでしょう。

    • マジックバッグの中身は、想像以上のお得感!3〜4倍以上のお値打ち品がゾクゾクと

     夢の福袋、マジックバッグには一体どんなフードが、どれだけ入っているのでしょうか。今回は、フード・カフェ・レストラン・パン屋・スーパーの5種類の店舗が販売しているマジックバッグを購入してみました。

    【Ryce:フード】

    マジックバッグの値段:£4(£12相当)
    マジックバッグの中身。

     

    チキンカレー、パスタ、牛乳
    パスタや飲み物の賞味期限は、とても短いというわけではありませんでした。
    (パスタの期限:07/2022、牛乳の期限:10/2022)

    Q:いつから始めていますか?なぜ始めたのですか?

    A:このお店は2018年にオープンしたけど、その後2、3年は廃棄する食品がたくさんあったわ。毎日カレーが3~5食、サンドイッチやヌードルも数個余っていた。それでこのアプリを導入したのよ。このアプリを始めたのは最近で、3、4ヶ月目が経つかな。私たちのお店では新しいサービスだけど、今は破棄するものがほとんどないわね。

    Q:1日どのくらい販売していますか?

    A:販売する数はフードの在庫数で変わるわ。期限が近いフードがない場合は販売しないこともあるけど、平均は平日は3~5食ほど、休日はそれ以上販売する日もあるかな。普段はバラエティーに富んだマジックバッグをつくっている。チキンカレーやポークカレーのバッグ、その他のフードが入っているバッグがあってランダムなの。でも今日は在庫の関係上、チキンカレーのバッグしか準備できなかったわ。

    Q:何時に販売していますか?

    A:ピックアップの時間は17~18時に設定しているわ。閉店は21時だけど、夜の時間帯はデリバリーのオーダーがよく入るからその前に販売しているの。

    Q:客層は同じですか?

    A:全く別ではないと思うよ。あなたのようにマジックバッグを買いに初めて来店してくれる人もいるし、普段イートインする人もマジックバッグを買うことがあるわ。

    Q:なぜカスタマーは買うと思いますか?

    A:まずはやっぱり値段が安いからだよね。古くなったフードというより、古くなる前のまだ新鮮なフードを、普段よりも安く買えることは魅力的じゃないかしら。もう1つは、オーダーしておけば、後はピックアップするだけで、列に並ぶ必要もフードが出来上がるために待つ時間も必要ないから、楽だと思うわ。

       

    【Cafe O’Porto:カフェ】

    マジックバッグの値段:£2.99(£9相当)
    マジックバッグの中身。

    ケーキ2つ、菓子パン4つ

     こちらのお店は、前もってマジックバッグが準備されているわけではなく、受け取りに行った時にショーケースの中からいくつかフードを選んでマジックバッグを作ってくれました。

    Q:いつから始めていますか?

    A:多分5年ほど前に始めたと思います。

    Q:1日どのくらい販売していますか?

    A:センシティブな情報でもあるから詳しくは教えられないけど、ほとんど毎日販売している。販売数はその日によって違います。

    Q:何時に販売していますか?

    A:ピックアップの時間は16:00~16:30に設定しています。閉店が17時なので、その日に余っている在庫を販売します。

     

    【North Sea Fish Restaurant:レストラン】

    マジックバッグの値段:£4(£12相当)
    マジックバッグの中身。

    ソーセージ3本、ミートパイ、フィッシュパイ

     このお店はレストランと魚屋が並列しており、閉店作業をしている魚屋でマジックバッグをピックアップすることができました。ボックスの中身は温かかったので、受け取り時間の少し前に、マジックバッグを準備されていると思いました。

    Q:いつから始めていますか?なぜ始めたのですか?

    A:数ヶ月前から始めた。

    Q:1日どのくらい販売していますか?

    A:1日2個くらい販売している。まずフードロスが出ないように日頃から気をつけていることもあって、毎日出るロスはそれほど多くない。その日の販売状況や在庫状況をチェックして期限がせまっているフードをマジックバッグとして販売している。

    Q:何時に販売していますか?

    A:21:30~22:00 お店の閉店後に販売している。

    Q:なぜカスタマーは買うと思いますか?

    A:やっぱり安いからじゃない?

    【Blakes Bakery:パン屋】

    マジックバッグの値段:£3.39(£12相当)
    マジックバッグの中身。

     

    クロワッサン5個、パニーニ2個、トマトチーズクロワッサン
    アボカドとパプリカのバゲット、ベーコン・クリームチーズのバゲット、ツナとサラダのバゲット、ノーマルのバゲット

     このサービスを始めて1年半ほどになります。以前はたくさんのフードロスがありました。なぜなら、その日に売れなかったほとんどのパンは、食べられるけれど、次の日にお店で販売することができないからです。そのため、私たちスタッフがもらうか、捨てるしかありませんでした。このサービスはかなり良いと思います。廃棄するフードは確実に減ったと思います。

    Q:1日どのくらい販売していますか?

    A:仕込みの量によって変わりますが、今日は平日で忙しくないから2個だけ販売しています。ただ私たちはお客さんが満足できるマジックバッグを販売しています。

    Q:何時に販売していますか?

    A:17:30~18:00 閉店前に設定しています。今日はもう少しで閉店するけど、バゲットが1つ余っているから、それも一緒にもっていっていいですよ。

     このお店はアプリ内での評価も4.9/5ととてもよく、マジックバッグの中身は驚くほどたくさんの美味しいパンが入っていました。また閉店間際ということもあり、店内に残っていて当日廃棄になるもの、今回はバゲットを追加でくださいました。

      

    【PLANET ORGANIC:スーパー】 

     ここのスーパーはチルド・惣菜・パン・訳あり商品という4種類のマジックバッグを販売しており、今回はチルドを購入しました。

    マジックバッグの値段:£3.3(£10相当)
    マジックバッグの中身。

    チーズソース、ザワークラウト、ヨーグルト
    調理済みのカニ、サーモンの切り身(ヴィーガン用)
    全ての商品に割引シールが貼られており、期限が当日のものでした。

     

    Q:1日どのくらい販売していますか

    A:チルド類は3~5個/日販売しています。

    Q:どんなものを販売していますか。

    A:賞味期限が近づくと商品に割引シールを貼ります。それでも残った商品かつ、期限が今日のものをマジックバッグとして販売しています。パン、デザート、お寿司、サラダ、缶詰、あとはジュースなどの飲み物を販売することが多いです。

    Q:何時に販売していますか?

    A:19:00~19:45 閉店時間(20時)の前に設定しています。

     

    ・環境にも財布にも優しいアプリ。リサイクルフードで、フードロス削減

     イギリスでは、大手カフェチェーン店やスーパーをはじめ、パン屋さんやレストランなどでマジックバッグを販売しています。環境保護に貢献しながら手軽にお店の料理が食べられるという機会は、やはりユーザーにとって嬉しいものです。人気のお店のマジックバッグは、販売開始後すぐに売り切れてしまうこともあります。中身がわからないため苦手なものが入っているのではないか、保存できない、決められた時間にその場所に取りに行かなければならないというような声もありますが、私は実際に利用してみて、どんなものが入っているのかワクワクする気持ちが大きかったです。量が多かったり食べられない時は、ハウスメイトとシェアしたので何も問題はありませんでした。ピックアップの時間については、閉店間際に販売しているお店でなければ、多少時間がすぎても受け取ることができました。

     個人的な感想としては、すでに作られ、販売されているフードの中から、今日捨てなければいけないものをマジックバッグとして販売しているお店もあれば、このバッグをつくるために、期限が近いものや在庫が多くあるフードを使い、一から準備しているお店の方が実際は多いのではないかと感じました。ただ、世界的にサスティナビリティや環境保護への取り組み意識が高まっているいま、Too good To Goのような環境にも財布にも優しいアプリは、ますます普及していくのではないでしょうか。

     日本では、食パンJAPANやTABETE(タベテ)、Reduce Go(リデュース・ゴー)などが登場しています。ぜひチェックしてみてください。

    (£1=163.47円、2022年4月11日現在)

    イギリス特派員 キャリーさん■ライタープロフィール

    Carrie(キャリー)

    ロンドン在住の26歳。貿易会社を経営する傍ら現地在住ライターとしてイギリス発祥やイギリスに初登場したお店、SNSで人気の商品や現地で話題のものなどをタイムリーに発信中。「旅行が難しいこんな世の中ですが、少しでも現地の雰囲気がみなさんに届けられると嬉しいです。読んで、見て、訪れて、楽しい時間を一緒に過ごしましょう」

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