リサイクル先進国のイギリス。「ロンドンの象徴」赤い電話ボックス、再利用で可愛いお店に大変身

新しく生まれ変わった電話ボックスの正体とは?

 エスダムスメディアJAPANでは、世界各国に駐在しているエスダムス海外特派員より届いた、まだ日本では知られていないリアルなローカルニュースを配信しています。今回はロンドンの象徴でもある、赤い電話ボックスの“いま”について紹介します。

  • http://イギリス特派員 キャリーさん
    • 2022年×電話ボックス。通話時間が100分の1に激減!!そんな電話ボックスが○○に大変身

     

     ロンドンといえば、赤い電話ボックスをイメージされる方も多いのではないでしょうか。昔は日本の公衆電話と同じように使用されていましたが、携帯電話の普及によりここ数十年の間で使用される機会が激減し、次々と廃止されています。20年ほど前のイギリスでは10万台近くあった電話ボックスが、現在では約2万1000台。以前は8億分だった電話ボックスの通話時間が、2020年は700万分(ジーディーネット:ZDNetより)。昔のたった100分の1の時間しか利用されていないのが現状です。また、1年間に通話した回数が52回未満かつ、事故多発エリア外にある電話ボックスが廃止の対象になるそうです。
     実際のところ、ロンドンにある電話ボックスは、落書きをされたままや壊れたままホコリをかぶって放棄されていることも珍しくありません。現在イギリス国内にある電話ボックスのうち、約7000個が観光地周辺に存在していると言われています。赤い電話ボックスを街のアイコンとして保存したいという声も多く、ここ数年でたくさんの電話ボックスが、従来とは異なる用途で使われ始めました。
     新しく生まれ変わった、第二の電話ボックス。みなさんは、公衆電話から美味しく魅力的なフードを手に入れることが想像できますか?

    • 電話ボックス×️コーヒー。ロックダウンに負けず、本格的なコロンビアコーヒーを提供するカフェ

     二人のオーナーLore MejiaとSean Raffertyはコロンビアで出会い、2020年3月にロンドンで「Amar Café」を誕生させました。ロンドンの人たちにもおいしいコロンビアのコーヒーを飲んでもらいたいと思い、マーケットや小さなお店を探していたときに電話ボックスのショップに出会ったそうです。2年前、ロンドンの西側にあるChiswick(チジック)中心部に1号店がオープン。その1週間後にイギリスはロックダウンとなり閉鎖を余儀なくされました。その後困難を乗り越え、1年以上にわたり3カ所の電話ボックスでコーヒーショップを経営しました。しかしロンドンは雨が多く、そしてまた夏の期間も短いため、冬は15時すぎになると外が暗くなり始めます。そんな気候の影響を受け、昨年の秋より電話ボックスの営業を全て休止しているとのこと。
     
     現在はお店自慢のコーヒーをChelsea(チェルシー)とCamden(カムデン)にあるショップで楽しむことができます。値段は£3前後。
    (£1=160.27円、2022年3月31日現在)
     
    スタッフ: Edison(エディソン)さん、フィリピン出身
     「僕はロンドンに住んで13年になる。僕以外の家族は日本に行ったことがあるよ。僕の中で日本はコロナが終わったら旅行に行きたい国の1つだね。電話ボックスのコーヒーショップは、去年の秋頃にストップしたけど、ロンドンで1年以上続けられたことは誇りに思うよ。いろんな人がこのお店を記事にしてくれたり、僕たちの電話ボックスの前で結婚式の写真をとってくれた。このお店は変わらずたくさんのお客さんが来てくれるさ。君が来る30分前まで日本人の子達が何人かここにきてたよ。」
     コーヒーカップには、お店の始まりでもある電話ボックスがデザインされています。フレンドリーで優しい店員さんがいる空間で飲むコーヒーはとても美味しかったです。

    ■店舗情報
    Chelsea:15 Cale St, London SW3 3QS
       月・火・水曜:7:30~18:00
       木・金曜:7:30~23:00
       土・日曜:9:00~18:00

    Camden:2nd Floor Waterside East Hawley Wharf, London NW1 8JZ
       毎日:19:00~18:00

    • 電話ボックス×️ティラミス。手頃な価格で本格的なイタリアンをテイクアウトできるお店
       

     イタリア出身のオーナーが経営する、「Walkmisú」はティラミスやラザニアなど、イタリアのフードを販売しています。

     電話ボックスからコーヒーショップが誕生し、次のステップとしてそれらのコーヒーを使ってイタリアの有名なデザートを作ろうと思いついたのが、このお店の始まりです。Walkmisúは2020年1月に誕生しましたが、ロックダウンの影響を受けオープンすることができないまま数ヶ月が経過。オーナーは空家賃を払い続け、2020年8月に念願のオープンを迎えました。そして翌年2021年には電話ボックスを1つ増やし、コーヒーの販売も同時にスタートさせました。
     このお店のメニューは全てイタリア産の材料を使用しています。一番人気はティラミスで、ノーマル・ココナッツ・塩キャラメル・ピスタチオ・バナナ&チョコレートなど、さまざまな種類があります。コーヒー豆ももちろんイタリア産で、ナポリで焙煎された美味しいコーヒーを提供しています。
     手軽で本格的なイタリアンが食べられると有名になったWalkmisú。ランチメニューはアランチーニかフォカッチャ+ティラミス+ドリンクのセットで、£7.95。ラザニア+ティラミス+ドリンクのセットで、£9.25。
     私はランチタイムの後に訪れたので、フォカッチャやラザニアなどのストリートフードは全て売り切れていました。そのため一番人気のクラシックなティラミスとコーヒーを購入。値段は£5.75。近くに公園があるので、そこでゆっくり食べることができます。ティラミスは甘すぎずなめらかな口溶けで、温かいコーヒーとの相性もバッチリでした。

     

    オーナー:もともと接客業をしていたんだ。このお店を開こうと思って準備していたけど、ロックダウンでなかなかオープンすることができなくて辛い時間だった。他のイタリアンレストランやコーヒーショップと違うのは、やっぱり値段かな。これは僕のお店の強みでもある。従業員も雇っていないし、電気代や家賃のコストも全然違うだろうね。手頃な値段で、イタリアのフードとコーヒーを楽しむことができるよ。ランチタイムは特にお客さんがたくさんくるね。
     クオリティが高いイタリアンを気軽に楽しむことができる場所、それがWalkmisúです。
    ■店舗情報
    所在地:(平日)47 Russell Square

        (休日)Russell Square,East corner,WX1B 5AR
    営業時間:(平日)9:00~17:00
         (休日)10:00~17:00

    • 電話ボックス×️フォカッチャ。世界で最も小さなフォカッチャ専門店が、今年1月にオープン!

     ローマ出身のガブリエルがオーナーを勤める、「Pinkadella」というお店。今年の1月1日、ロンドンの北部にあるHampstead(ハムステッド)にオープンし、現在は”世界一小さなフォカッチャ屋さん”として、地域の人たちから人気を集めています。
     イタリアでミュージシャンをしていたオーナー。3年前からロンドンに住み始め、家族がイタリアでレストラン業を営んでいたこともあり、ロンドンで自身のお店を開くことを考え始めたとのこと。そんなとき、イギリスの象徴的で歴史的な電話ボックスを使ってみることを考えたそうです。
     このお店では、モルタデッラというハムやチーズなどをはさんでトーストしたフォカッチャを食べることができます。フォカッチャはイタリア系のパン屋さんから毎日届けられ、モルタデッラはイタリアから直輸入しているため、本格的なフォカッチャを食べることができます。お店には3種類のフォカッチャ(£6-7.5)がありますが、自分の好きなトッピングだけを選ぶこともできます。私はモルタデッラ、モッツァレラチーズ、ペースト状のバルサミコ酢でフォカッチャを作ってもらいました。まわりは香ばしくトーストされサクサクしており、中はしっとり。こだわりのハムとペーストとの相性もよく、満足感のあるフォカッチャでした。
      
    オーナー:Gabriel(ガブリエル)さん、イタリア出身、30代男性
     「ハムステッドは小さな村みたいなところだから、近くに公園もあるし、住んでいる人たちに知ってもらいやすいと思ったんだ。電話ボックスを使おうと思った理由は、同じ店はどこにもないし特別感があるところ。そして決まった場所にとどまる必要がなくて、いろんな場所で展開することができるところが良いと思った。今はオープンして間もないし、ロンドンの天気に左右されることも多いから、すごく忙しいわけではないけど、まぁまぁ上手く行っていると思う。忙しいときは1日40、50個のフォカッチャを販売しているよ。僕は日本が好きだし、いつかは行ってみたいと思っている。イタリアでも日本料理はすごく人気だね。ボナペティ。アリガトウ。オイシイ。」
     取材や写真撮影にとても紳士的に対応してくださったジェントルマンのオーナーがいるお店はこちらです。

    ■店舗情報
    所在地:phone booth, 40 Rosslyn Hill, London NW3 1NL
    営業時間:(木~日曜)10:30~16:30 (※天候などによる営業日時の変更あり)

    • 電話ボックス×️○○。可能性は無限。新しい時代を生きる電話ボックス

     実際のところ、イギリス国内にはフード以外にも、花屋さんや図書館、ATMやアートギャラリー、洋服のお店など、いろんなアイディアによって変化した電話ボックスがたくさんあります。従来の電話ボックスとしての用途にとどまらず、進化し続けているのが分かりますね。
     イギリスの象徴である赤い電話ボックスが、いろいろな形で生まれ変わり、いまも街のアイコンとして存在しています。ロンドンで電話ボックスのお店を見つけたら、ぜひ訪れてみてください。

    • 2022年4月より、リサイクル先進国のイギリスではプラスチック税が新しく導入される

     イギリスでは、2022年4月からPlastic Packaging Tax(プラスチック製包装税)が導入されます。ちなみにイギリスでは、2020年10月よりプラスチック製ストローの使用が禁止されており、今回の新しいTaxの導入はこれに続くものです。課税対象は、プラスチック製包装材の生産者と輸入者です。
     リサイクル先進国のイギリスではこのような法律をつくり、積極的に環境保護に取り組んでいます。
    https://www.gov.uk/government/publications/introduction-of-plastic-packaging-tax-from-april-2022/introduction-of-plastic-packaging-tax-2021(外部リンク)

    イギリス特派員 キャリーさんライタープロフィール
    Carrie(キャリー)
    ロンドン在住の26歳。貿易会社を経営する傍現地在住ライターとしてイギリス発祥やイギリスに初登場したお店、SNSで人気の商品や現地で話題のものなどをタイムリーに発信中。「旅行が難しいこんな世の中ですが、少しでも現地の雰囲気がみなさんに届けられると嬉しいです。読んで、見て、訪れて、楽しい時間を一緒に過ごしましょう。」

     

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